心筋梗塞を防ぐには

狭心症・心筋梗塞の前兆
(患者さんの声参照)

狭心症の患者さんは胸痛発作が出て、はじめて病院に行くという場合がほとんどですが、胸痛が起こる前にもなんらかの初期症状は現れます。そのひとつは、胸部、左肩、左腕などの違和感です。狭心症は冠動脈が狭くなり、血液循環の不良が左肩の違和感となって現れます。数分から15分程度の左肩の違和感を自覚したら要注意です。
心臓は横隔膜を隔てて胃と接しているので、胃の痛みとして現れる場合もあります。胃の検査をしても異常がないため、放置されがちです。そのほか、坂や階段を上がっているとき、息切れがひどくなったり、急に胸が痛み出したりします。
不安なようでしたら、一度循環器内科を受診して相談してみましょう。

患者さんの声

生活習慣の改善

生活習慣が乱れていると、心臓を巡る冠動脈が硬く、狭くなり、狭心症や心筋梗塞の要因になります。とくに注意すべき危険因子が、脂肪分や塩分の多い食生活、喫煙、運動不足です。
これらの危険因子は、血液中にLDL(悪玉)コレステロールを増やし、内臓の周囲に脂肪をたまりやすくします。この内臓脂肪の蓄積によって分泌されるホルモンなどの作用で、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が誘発されます。血中の糖や脂肪が冠動脈を傷めて、狭心症や心筋梗塞を発症させるのです。予防するには、日々の暮らしを見直すことが第一といえるでしょう。

狭心症・心筋梗塞の危険因子

塩分・糖質過多

血液中の塩分が多くなると、血圧が上がる一因に。炭水化物などの糖質は、過剰に接種すると血液中に中性脂肪を増やし、脂質異常症や糖尿病の原因となります。

脂肪分過多

肉、乳製品などの動物性脂肪やヤシ油などに多く含まれる飽和脂肪酸を取りすぎると、血中にLDL(悪玉)コレステロールが増えて、動脈硬化が促進されます。

ハンバーガー

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食生活の改善

塩分、脂肪分、糖質を控えめにして、野菜や魚介類中心の食事を摂ると、血圧や血液中のLDLコレステロール、中性脂肪が減少し、動脈硬化や生活習慣病を予防できます。また、魚に含まれるDHAやEPAの栄養成分には、血栓ができるのを防ぐ効果があります。

食べ物の種類

たばこ

たばこの煙に含まれるニコチンや一酸化炭素は血管内の細胞を傷つけ、血液の粘度を高めて血流を悪くします。

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禁煙

たばこをやめるとHDL(善玉)コレステロール値が改善します。動脈硬化の進行や血栓ができるのを抑えられるので、狭心症や心筋梗塞のリスクを減らすことができます。

たばこ

運動不足

運動不足で筋肉量が減ると基礎代謝が悪くなり、太りやすく、内臓脂肪もつきやすくなります。血液の循環も悪くなって、生活習慣病のリスクが高まります。

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はや歩きで生活習慣を予防

生活習慣病の予防には、週に1回1時間程度のはや歩き(90〜100m/分)を行うとよいです。
ラジオ体操やはや歩きなどを30分以上、週に5回行うと、1か月で内臓脂肪が1〜2%近く減少するという報告もあります。ひざ痛や腰痛などの持病がある人は主治医に相談してください。

ランニング

メタボリックシンドロームの解消

高血圧や糖尿病、脂質異常症の背景には、食べすぎや運動不足などによる「内臓脂肪型肥満」があることが少なくありません。これらが重なった状態が、狭心症や心筋梗塞を起こしやすい「メタボリックシンドローム」です。
メタボリックシンドロームを解消すれば、心筋梗塞などの予防に効果があると報告されています。また、同じ糖尿病でも、血圧、血糖、脂質などの目標値を厳格に定め、治療するほうが、より高い予防効果があります。

メタボリックシンドロームと
狭心症・心筋梗塞

内臓脂肪型肥満

主に小腸を包んでいる「腸間膜」などに蓄積する脂肪を、「内臓脂肪」と呼ぶ。内臓脂肪型肥満とは、内臓脂肪が多いタイプの肥満。

→血圧の上昇・耐糖能異常・脂質異常→動脈硬化→狭心症・心筋梗塞

蓄積した内臓脂肪は、動脈硬化の原因分子である脂質異常、血圧上昇、耐糖能異常*を引き起こす。放置すると狭心症や心筋梗塞につながる。

  • 健康な人よりも血糖値は高いが、まだ糖尿病には至っていない状態。

メタボリックシンドロームの判断基準

・おへその高さの腹囲

男性:85cm以上 女性:90cm以上

+

・①〜③のうち2つ以上に当てはまる
①血清脂質異常
中性脂肪値:150mg/㎗以上
HDLコレステロール:40mg/㎗未満 の一方、または両方
②高血圧
収縮期血圧:130mmHg以上
拡張期血圧:85mmHg以上 の一方、または両方
③空腹時高血糖
空腹時血糖値:110mg/㎗以上

上記の条件に当てはまると、「メタボリックシンドローム」と診断される。メタボリックシンドロームは、動脈硬化を促進させる。

メタボリックシンドロームの対策

生活習慣の改善

・食事・運動など

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改善がみられず、生活習慣病に進展したら

↓

薬物治療

・高血圧の薬・糖尿病の薬・脂質異常症の薬

メタボリックシンドロームの対策で最も重要なのが生活習慣の改善。生活習慣病に進展した場合には、薬物治療も行われる。

糖尿病のある人において、通常の治療を行った群と厳格な治療を行った群を比べると、厳格な治療を行った群のほうが、心筋梗塞などの予防効果がより高かった。

糖尿病治療の厳格さの違いによる心筋梗塞などの発生率の比較

糖尿病治療の厳格さの違いによる心筋梗塞などの発生率の比較 グラフ

通常 厳格
血圧(mmHg) 160/95以下 140/85以下
血糖(HbA1c,%) 7.5以下 6.5以下
総コレステロール値
(mg/㎗)
250以下 190以下

動脈硬化予防の食生活

動脈硬化の予防には、塩分や糖質、脂質、コレステロールの摂りすぎに注意します。ただし、薄味すぎたり、パサパサしておいしくないと食事療法も長続きしないので、調理法を工夫することが大事です。
積極的に摂ったほうが良いと考えられているのは、野菜や海藻類、大豆、そして魚介類です。これらの食品に多く含まれるカリウムやマグネシウムが不足すると、高血圧のリスクが高まります。
魚に含まれるEPAとDHAの不飽和脂肪酸には、中性脂肪を減らし、血栓をできにくくして、血流をよくする働きがあります。魚料理を2日に1回、最低でも週に1〜2回食べると、心疾患を抑制する効果があると言われています。

血管によいとされる栄養素

カリウム

カリウムはナトリウム(塩分)を排出させ、血圧を下げる働きがあるので、高血圧の予防に有効です。納豆やしいたけ、セロリ、ジャガイモなどの野菜に多く含まれるので、塩分を多めに摂った日はこれらの食材を多く摂るとよいです。ただし腎臓障害がある人は医師に相談してください。

納豆、しいたけ、セロリ、ジャガイモ

納豆、しいたけ、セロリ、ジャガイモ など

マグネシウム

カルシウムと一緒に摂ることで作用し合い、血圧を調整し、循環器疾患のリスクを下げます。筋肉の収縮を助ける働きがあり、飲酒すると排出されやすいです。乾燥わかめやあさり、アーモンド、クルミなどの木の実、煮干しなどに多く含まれます。

わかめ、あさり、アーモンド、クルミ、煮干し

わかめ、あさり、アーモンド、クルミ、煮干し など

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